平成31年4月に元号が決まり,御代替わりにかかる全ての儀式が斎行され,初めての新春を迎える本年,放生津八幡宮宮司より一言お祝いの挨拶申し上げます。

平成27年10月24日・25日「全国豊かな海づくり大会(富山大会)」に際し,上皇后様が当宮の曳山13基を天覧賜り光栄至極に存じます。この場を借りて,改めて御礼申し上げます。

御代替わりに際し,当宮に於いても令和元年5月1日「践祚改元奉祝祭」,同年11月12日「大嘗祭前二日大祓式」を斎行いたしました。皇室の弥栄を御祈念申し上げます。

さて,新しい元号である,「令和」は日本最古の歌集『万葉集』(巻5)「梅花の宴」32首の序文―初春の令月にして,気淑く風和らぎ,梅は鏡前の粉を披き,蘭は佩後の香を薫らす―が典拠であります。この『万葉集』の編纂者と考えられている大伴家持卿は天平18年,中央から越中(現在の富山県)に国司として赴任されました。奈呉の浦(現在の富山湾)を愛でられ,放生津八幡宮を建立されたと伝わります。

放生津八幡宮の北方には富山湾が位置し,東方には白銀屏風が如く3000メートル級の立山連邦が窺えます。当時の中心である近畿地方からみると鬼門の位置に鎮座します。

立山から湧き出す清らかな水が,富山湾に注がれることにより,白エビ・ホタルイカ・カニ・万葉カレイをはじめ新鮮な魚介類にとって好ましい海域となっております。

また,富山の大地は良質な水と相俟って作物を美味しく育てます。昔からコメが豊富であり,神様にお供えする上等な日本酒が生み出されます。

 

 秋季例大祭は9月30日から10月3日の期間です。このうち,10月1日「曳山行事」,10月2日「築山神事」が執り行われます。「築山行事」は昭和57年,「曳山行事」は平成26年に富山県無形民俗文化財として指定を受けています。

富山県には曳山行事が複数存在し,このうち放生津八幡宮の10月1日に斎行される秋季例大祭では県内最多となる13基の曳山が巡行いたします。当宮の神輿に曳山が供奉する形態は慶安3年に始まり,約370年続く行事です。また本祭である10月2日には,当宮の名称由来になった放生会式及び築山神事が行われます。築山神事は,当宮拝殿東側に配置されるもので,松の古木から祖神の降臨を仰ぐ特殊な祭礼です。この築山と曳山の2種類の祭礼を執り行っている地域は全国的に珍しく,近年,有識者・研究者等から学術的に注目されています。

 

「まつり」には先人たちの気概・気骨というのでしょうか,忘れてはならない重要な要素が多く詰まっています。これらは大切な日本文化であります。安定的に保存・継承するべく,当宮では「放生津八幡宮築山・曳山保存会」が平成29年に発足するとともに,有識者や八幡宮関係者で構成される「射水の築山・曳山行事調査指導委員会」が3ヵ年の行事調査を行い,放生津地域の皆様とともに「国指定」に向けて邁進しております。

 

さて,令和の風が日本中に薫りつつありますが,外務省によれば”beautiful harmony”と英訳するようです。ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピック競技大会,大阪万博等を含み,海を経て諸外国の方々も日本文化に興味を示されることと存じます。相互理解を大切にし,美しい調和,平和構築につとめていただきたく存じます。

 

昨今情報化が加速的に進み,より便利になって参りました。日本人の優秀さが窺えます。他方,豊かさは経済面だけがすべてではありません。時として人々は信ずる心,感謝する心,人を敬う心を忘れがちであります。日本人の文化観念が希薄になることはあってはなりません。古代から,日本人は「まつり」を大切にして2680年の歴史を紡いで参りました。三大神勅にもとづき,人々の繁栄を絶やさないことが肝要と存じます。これが皆様の精神的な豊かさにつながるのではないでしょうか。

 

新年には家族や友人に感謝するとともに,お近くの御社に新たな気持ちでご拝礼いただき清らかな気持ちでお過ごしいただきたく存じます。また,「思い立ったが吉日」とも申しますように,近年,北陸新幹線も開通しましたので,当宮にも興味を持っていただければと存じます。

 令和のあけぼのに際し,富山にて美味しい海の幸・山の幸を堪能してください。皆様の弥栄を御祈念申し上げます。​